一億総服役社会
ベーシック・インカム反対論に反論3 ⑥
ベーシック・インカム反対論に反論するシリーズの続きです。
お題は↓コチラで取り上げたビデオです。
ベーシック・インカム反対論に反論3 日本は破綻するのか - すべての働きたくない人へ
ダラダラと何回にも渡って続けておりますが、このビデオに関しては今回が最終回です。
今回は「社会参加で人間は鍛えられる」問題を考えます。
問題の概要:
生活保護が機能してないと言う話の流れから…
「俺なら簡単に貰える自信がある。法的根拠を示す書類出してビデオで撮影して… そうしたら"面倒な奴が来た"と簡単に通すんじゃないか?」
萱野
「それが問題を端的に示している。生活保護を受けるような人は一人で交渉する能力が無い事が多い。」
「だがそう言う交渉力は仕事を通じて身につく。」
「それを"お金だけ渡しましょう"としたら一生一人で何も出来ない人間になる。」
と言うような旨のやり取りでした。
まとめると
・働くことで人は成長する。
・人にはそれが必要だ。
・だから働かないで済むようなシステムはダメだ。
と言う感じでしょうか。
反論:
パッと思ったのは「人に厳しい考えだな」「大きな政府を志向してるらしい萱野だが、これは "自己責任" を要求する考えだな」等です。
じっくりネチネチと攻めていくと…
1. 職業選択の自由があるので今だって萱野の考えるようにはなっていない。
2. それは教育論。押し付けは危険。
3.「普通以下の人」の事を考慮してない。
1. 職業選択の自由があるので今だって萱野の考えるようにはなっていない。
確かに、コミュニケーション能力の低い人でも、営業とか販売とか接客系の仕事を経験すると、その人なりにコミュニケーション能力が成長する事はあると思う。
でも、職業選択の自由があるので、人と接するのが嫌な人は、それをせずに済むような仕事を選択しているだろう。
例えば開発系、職人系、工場、掃除…
もちろん何れにせよ、働けば多少なりとも人と接する機会はあるので、引きこもっているよりはコミュニケーション能力が鍛えられる事はあると思うが、「交渉力」が必要とされる場面がどれだけあるだろうか?
要するに、「成長」と言っても選択した仕事によって偏りがあり、別段鍛えられない能力もあると思うのです。
2. それは教育論。押し付けは危険。
じゃあ、自由に選択させず、不足能力に応じて指示すべきか?
「コミュニケーション力、交渉力を得るため営業の仕事をしろ」
この理屈は例えば…
「根性鍛えるために自衛隊に入れ」とかも同じ構造だと思います。
でも、そう言った考え、それ自体を批判する気はありません。
このような事は、親が子に、教師が生徒に、教祖が信者に、自己啓発セミナーの講師が参加者に言うとかならまだわかります。
好感は持てないけど社長が社員に言うとかもまあ、アリでしょう。
教育論、修行論として。
問題は、誰が誰に言うかです。
成人に赤の他人が言う事じゃないと思います。
政府が国民に対して命じるとかなると、もうブラック国家じゃないですか?
色々例はあると思いますが、すぐ思いついたのは文化大革命期の「下放」とか。
そう言う国が良いんですかと。
ニートの演説3 議論無双編 - LINE クリエイターズスタンプ
3.「普通以下の人」の事を考慮してない。
ちょっと前に「累犯障害者」って本を読みました。
犯罪を繰り返して何度も刑務所に入る障害者の事を書いたノンフィクションですが、その中に「下関駅放火事件」の事も書かれていました。
犯人は知的障害者でそれ以前にも10回、放火で刑務所に入っていました。
動機は「刑務所に再び入るため」
塀の外に居場所も無いし、どうやって生きていけば良いか検討もつかなかったんでしょうね。
下関駅の件は大きな騒ぎになってしまいましたが、それまでは交番の近くで放火し即座に出頭する等、本当に「刑務所に入るため」としか思えない手口だったようです。
この犯人も、下関駅放火の直前、生活保護の申請に行ったけれども門前払いされていたそうです。
これは極端な例かも知れませんが、知的障害があって、人生の大半を刑務所で過ごして来て既に高齢、頼れる人脈も無い…
そう言う人に「仕事を通じて成長して交渉力をつけろ」等と言うのが妥当なのか?
努力を怠った本人の責任なのか?
萱野もこのレベルのケースを前にそこまで非道な言い方はしないかも知れませんが…
それでも程度の差はあれ「普通以下の人」にとってはキツい理屈じゃないかと思います。
「累犯障害者」の中で印象に残ったセリフで
「俺、今までの人生で、刑務所の中が一番暮らしやすかったと思ってるんだ。」
と言うものがあり泣けました。
これが今の世の中を端的に表しているような気がしました。
…と、ここまで書いて、奇妙な事を思いついてしまいました…
・弱者にとって刑務所の中の方が暮らしやすい。
・刑務所は作業も食事もあてがわれ管理される。
・刑務所以外でそれをやったらそれは何か?
・計画経済… 配給制…
・萱野は「計画経済を望んでるのか?」と思うような事をチラホラ言う。
う~ん…日本全部を刑務所にしてしまえば案外暮らしやすいのかな…
一億総服役社会…
生活の心配する事も無くなるのか…
それはそれで…良いのか?
萱野はそう言う事を考えているんだろうか…
何かそんな設定のゲームがあったな…
…ちょっと脱線しました。
話を戻します。
下関駅放火事件の例を出したのは極端過ぎるか?
「普通以下の人」はどれくらいいるのか?
知的障害者と言うのは意外と多くいる筈らしいです。
人口の2~3%はいる筈らしいですが、日本では殆どカウントされていない。
平成18年版「障害者白書」に記載された日本の障害者数は、655万9000人。うち知的障害者は45万9000人。しかし、人類の知的障害者出生 率は、2~3%。実際欧米の統計では、人口の2~2.5%が知的障害者だと報告されている。すると日本には240万~360万人の知的障害者がいることに なる。
著者の種明かしはこうだ。45万9000人とは障害者手帳の所持者の数なのだ。日本においては知的障害の8割を占める軽度の知的障害者の大部分は、障害者手帳を持っていないのである。
2~3%なら1クラスに1人くらいはいる事になる…
それから、健常者と知的障害者の違いと言うのは、明確に異なる点がある訳でなく、IQで示せる連続的なグラデーションになっているようです。
IQ80(あるいは85)以上:健常者
IQ70~80(あるいは85)以上:ボーダー
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IQ50~69:軽度知的障害
IQ35~49:中度知的障害
IQ20~34:重度知的障害
IQ20未満:最重度知的障害
上記のような「カウントされていない知的障害者」は普通の人に混じって生活している訳で大変でしょう。
でも、潜在的にはエクスキューズと言うか、救いがあり得るとも言えます。
萱野の理屈のような成長を強いる態度に対し、「知的障害者だから、しょうがない」と言える。
でもIQ70とか80の人はそれも言えない。
「普通」の土俵で戦って行くしか無い。
恐らく、結構苦労していると思うのですが。
皆がシャア専用ザクに乗ってるのに自分だけ普通のザクで戦わなければならないとしたら?
ついて行くだけでも結構大変なのでは?
ニートの演説2 心情編 - LINE クリエイターズスタンプ