働かないニートに意義がある
本日、アクセス解析を見たら、「朝日新聞 働かない蟻」で検索してのアクセスがあった事がわかりました。
それに応えるため、働かない蟻についてもう少し詳しく書きます。
そして最終的に、いかにニートを大事にすべきかという結論に持って行きます。
昨日、朝日新聞の記事を取り上げましたが、調べたら読売、毎日でも同じ事を報じていたようです。
この記事の元になった研究をしている、長谷川英祐准教授の書いた「働かないアリに意義がある」と言う本があります。
私、昨日、鬼の首を取ったよう朝日の記事について取り上げましたが、実はこの本を前に既に読んでおりました。
だから、私にとっては「働かないアリがいる」のは自明の事でアリました。
この本では何故そういう個体差が出るのかメカニズムを説明しておりました。
本は押し入れの天袋に突っ込んでしまっており、それを引っ張りだすのが面倒臭いので、うろ覚えの知識で解説します。
アリには興味があるので、他から得た知識も交じってるかも知れません。
個体差のメカニズム
アリっていうのは、フェロモンで会話、コミュニケーションをしてるんだそうです。
で、この「フェロモンの信号に対する反応の敏感さに個体差がある」と言う仮説があるそうです。
例えば幼虫が「腹減った」と言う信号を出した時、その信号に対して敏感な個体はすぐに幼虫に餌をやりに行きます。
幼虫が満足して信号を止めると、餌をやりに行った個体はエサやりの仕事を止めます。
しかし腹減った幼虫が複数いたらどうなるでしょう?
信号がその分「強く」なります。
そうすると、やや鈍感な個体も動き出します。
分かりやすく数値化すると、もっとも敏感な個体が信号の強さ1で動き出すのに対し、それより鈍感な個体は2とか3とかの信号を受け取らなければ動き出さない。
敏感度2の個体は、信号が1になれば離脱します。
この様に、敏感度に応じて順次参加、離脱する訳です。
それによって、手が足りない場所にはそれだけ参加者が多く集まり、仕事が減れば無駄に集中する事もない。
司令塔がいる訳でなく、各自がその場その場で信号に反応しているだけなのに上手く事が運ぶ訳です。
人間も同じ
この敏感度を人間で例えるならイノベーター理論(よく知らんけど)と同じですよ。
新製品や新サービスに対する敏感さを表す指標で、すぐに新しい物に飛びつく「新しもの好き」層、様子見てそれが多数派っぽかったら乗る層、中々動かない保守的な層、みたいに分類出来るっていう。
イノベーター理論(Innovator theory)
イノベーター理論とは、1962年にスタンフォード大学の社会学者であるエベレット・M・ロジャース(Everett M. Rogers)によって提唱された、新製品や新サービスの市場浸透に関する理論のこと。
Innovator theory。顧客の新製品や新サービスの購入態度をもとに、5つのタイプに分類される。
イノベーター(Innovators:革新者)
冒険的で新商品が出ると進んで採用する人々の層。
市場全体の2.5%を構成する。
イノベーター層の購買行動においては、商品の目新しさ、商品の革新性という点が重視される為、商品のベネフィットはほとんど無視される。アーリーアダプター(Early Adopters:初期採用者)
社会と価値観を共有しているものの、流行には敏感で、自ら情報収集を行い判断する人々の層。
市場全体の13.5%を構成する。
他の消費層への影響力が大きく、オピニオンリーダーとも呼ばれ、商品の普及の大きな鍵を握るとされている。
新製品や新サービスが提供するベネフィットが必ずしも万人に受け入れられるとは限らないため、市場に広く浸透するかどうかはアーリーアダプターの判断や反応によるところが大きいとされる。アーリーマジョリティ(Early Majority:前期追随者)
新しい様式の採用には比較的慎重な人々の層。慎重派ではあるものの、全体の平均より早くに新しいものを取り入れる。
市場全体の34.0%を構成する。
アーリーアダプターからの影響を強く受け、新製品や新サービスが市場へ浸透する為の媒介層であることから、ブリッジピープルとも呼ばれる。レイトマジョリティ(Late Majority:後期追随者)
新しい様式の採用には懐疑的な人々の層。周囲の大多数が使用しているという確証が得られてから同じ選択をする。
市場全体の34.0%を構成する。
新市場における採用者数が過半数を越えた辺りから導入を始める為、フォロワーズとも呼ばれる。ラガード(Laggards:遅滞者)
最も保守的な人々の層。流行や世の中の動きに関心が薄く、イノベーションが伝統化するまで採用しない。
市場全体の16.0%を構成する。
中には、最後まで不採用を貫く者もいる。
あるいは生活に引き寄せて考える事も出来ます。
例えば、「部屋の散らかり具合に対する敏感さ」
人によって結構差がありますよね?
チリひとつでも気になって神経質に掃除する人もいれば、絶句するような汚部屋で平然と生活出来る人もいる…
もし近藤麻理恵が違う時代に生まれていたら?
片付けに対する敏感さのトップランナーといえば、片付けの本を出し、肩書が「片付けコンサルタント」の"こんまり"こと近藤麻理恵さん等がいますね。
私も「人生がときめく片づけの魔法」読みました。
正直「ときめく」って言う感覚は良く分からなかったんですが、「モノに住所を与える」というのはナルホドと思って取り入れました。
しかし、70になる私の母等はこの「モノに住所を与える」と言う事の重要性も良く理解出来ないようでした。
何故、理解できないのだろうかと考えました。
そして思い至った事は…
私も、こんまりさんも、物が溢れる時代に生まれ育っています。
しかし私の親世代は若い頃、物がなかったのでしょう。
そもそもずっと「片付ける」必要などなかったのではないか?
「人生がときめく片づけの魔法」でも "ときめかない物" を容赦なく捨てるよう指南していました。
この方以外にも少し前に「断捨離」とか「捨てる技術」とか流行った記憶があります。
しかし、私の親世代の若い頃は、そんな技術は、技術とすら認識されなかったのではないでしょうか?
高度経済成長後に生まれ育った世代とその前の世代では「物」とか「片付け」に対するパラダイムが全く異なるのではないか?
そうやって考えると、むしろ人類の歴史において、そんな技術が必要とされるようになったのは、ごく最近だけに限られるのではないか?
要するに、何百万年と何の役にも立たなかった「片付けに対する敏感さ」がようやく現代において日の目を見たとも言えないだろうか?
こんまりさんは現代に生まれたから先生と呼ばれ、スターになれたが、もし生まれたののが50年早かったら?
あるいは、先の話でも同じです。
いつか石油が無くなると言われています。
どれくらい先かは分からないけど、そう遠くない未来に無くなるのは間違いないでしょう。
その時、今のように色々なモノを大量生産出来るでしょうか?
そもそも物に対する考え方が根本的に異なる人達も現れはじめています。
最近良く聞くミニマリストとか…
モノに価値を感じず、むしろ邪魔だとか重荷に感じると言う事でしょうか。
要するに、時代がもう一巡したら、「片付けに対する敏感さ」等また何の役にも立たなくなるかも知れません。
アナタも…
「『自分は社会の役にたってる』とか思っているアナタも同じかも知れませんよ?たまたま、今の時代、この状況だから働けているだけかも?」
時代、状況で活きる能力は全然違う
「ゆきゆきて、神軍」と言うドキュメンタリー映画があります。
奥崎謙三と言う凄まじいキャラのおっさんが、太平洋戦争時に自分が所属していた部隊でのゴタゴタを、戦後に追求するドキュメンタリーなのですが、その映画で印象に残っている部分があります。
同士討ち(あまりの食糧難のため仲間を殺して食ったとか食ってないとか。映画の中では当事者が明言する事は無いが、暗にそんな表現になっている)等で人が減っていく中、生き延びて帰って来れたある人が言ったセリフ
「俺は勘が良かったから有用だったんだ。例えば水がある場所が分かるとか。必要だったから殺されなかった。」
うろ覚えなので大体ですが、そんな感じだったと思います。
で、何が言いたいかと言うと、例えばこの人のように「何となく水のある場所が分かる」能力等は現代日本の平時においては全く役に立ちません。
発揮する機会が全く無いので「自分にそんな能力がある事」すら気が付かないでしょう。
結論
要するに、ある時代、ある状況で急に活きる特性(敏感さ)がある訳です。
それが何で、いつ活きるかは分からない。
そう言った様々な敏感さは、今、一見すると役に立ってない人達の中にプールされているのかも知れません。
今、この時に役に立たないからと言って働かない人を迫害してはいけません。