すべての働きたくない人へ

働かない事をあの手この手で肯定していくブログです。

ベーシック・インカム反対論に反論2

 

 ベーシック・インカム反対意見に対して反論していくシリーズ二回目です。

 

今回のターゲットはコチラ。

biz-journal.jp

 

書いた人は前回の記事と同じ筈井利人さんですね。

タイトルが「虚妄」とか「デタラメだと証明」とか随分煽ってますね。

よっぽどベーシック・インカムが気に食わないのでしょうか?

 

記事の趣旨は「ベーシック・インカムの利点、"小さな政府"はウソだ」と言う事で、その例としてベーシック・インカムそのものではなく、似たシステムで実際アメリカで導入されている「給付付き勤労所得税額控除(EITC)」を取り上げています。

 

これは、「負の所得税」とか言われるものに近いシステムで、要するに一定以下の所得しか無かった人は所得税が逆に貰えると言うものです。

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で、その「給付付き勤労所得税額控除(EITC)」を導入したアメリカでは、

1.貰える額が段々上がっていった。

2.「子供が何人いたら幾ら」と言った加算条件が足されていった。

ゆえに「小さな政府」じゃないじゃないか!

と言う主張ですが…

 

そもそも導入目的が違う

「給付付き勤労所得税額控除(EITC)」をWikiで見てみたら初っ端にイキナリこう書かれていました。

低所得の労働者の勤労意欲を高めることを目的として設計された制度。1975年に控えめに制定された後に徐々に拡張されてきた。

勤労所得税額控除 - Wikipedia

そもそも目的が「小さな政府にすべく」導入したのではなかった。

しかも、元々「控えめ」にはじめていた。

 

まあ、最初は低額で様子見ようとしたんじゃないですかね?詳しい事は知らんけど。

後、インフレの影響とかもあるんじゃないですかね。

 

蛇足だけど軽くツッコミ

「小さな政府」の話から逸れるのですが矛盾点なので一応突っついておきます。

 

筈井利人さん、前回は「ベーシック・インカムをやるとどんどん貧困になる」と書いていました。

そして、今回の記事ではベーシック・インカム=「給付付き勤労所得税額控除(EITC)」として話を進めています。

 

であれば「給付付き勤労所得税額控除(EITC)」をやると「どんどん貧困に」なると言う理屈になると思いますが、Wikiにはこんなことも書かれていました。

現在においては給付付き勤労所得税控除制度は米国における貧困防止のための主要なツールの一つになっている(支給額を除いた貧困率の統計においても貧困防止の効果が現われている)。

 

そもそも、そんなにダメなシステムなら1975年から今まで続いているでしょうか?

 

そもそもベーシック・インカムと違う

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ベーシック・インカムにすると何故「小さな政府」になるのか?

前の記事の繰り返しになりますが、もう一度まとめておくと…

1.生活保護とか年金等と一本化できるから、それに関わる仕事、公務員を減らせる。

2.無条件に全員に配るので、「受給資格があるかどうか」の調査が必要ない。

ゆえにシンプルで「小さな政府」だと言うことです。

 

「給付付き勤労所得税額控除(EITC)」はこの1も2も満たしていない。

「小さな政府」になる訳がない。

 

前に引用した部分ですがもう一回貼っときます。

 たとえば、ベーシックインカムで100兆円配るがそれに関わる公務員が1000人である政府と、社会保障支出は70兆円だが、それに関わる公務員が1万人いる政府とでは、実質的にどちらが「大きな政府」だろうか。

diamond.jp

 筈井利人さんは額が上がっていく事を非常に問題視してるようですけど、「小さな政府」かどうかは単純に額だけの問題ではないのです。

政府がどれだけ面倒を見るか(口出しをするか)の問題です。

 

 

問題の捉え方がおかしい

 フリードマン社会保障の行政事務が簡素化されることを負の所得税のメリットの一つと考えた。ところが皮肉なことに、もし簡素化できた場合、コストの増大に拍車をかけることになる。それまで面倒だった給付金の申請手続きがしやすくなり、申請者数が増えると見込まれるからである。

これは余計な事書いちゃったんじゃないかなー

 

電器屋とかスーパーでよくポイントありますよね。

100円につき1ポイントが貯まって、ポイントは買い物で使えます的な。

 

有効期限があるタイプだと、有効期限までに使わないでムダにする人が何%かいるそうですね。

で、それはその分、店側にとって「得」だと。

 

要するにそう言う構図で見てるんでしょうかね。

今までは手続きが面倒だったから、本来貰えるはずの人の中にも貰ってない人がいた。

それを手続き簡単にしてそう言う人達が本当に貰っちゃったら「損」じゃないか!

的な。

 

商売の話で、店と客の関係ならば分かるんですが、税と社会保障の話でこの構図はおかしくないですか?

じゃあ今までは払いたくないからワザと複雑にしてたのかと。

それを良しとするなら分かりにくくて複雑なほど良いシステムと言うことになる。

ハッ!?

ナルホド…

確かに、それで足切りしまくって、「結果的に面倒はほとんど見ない」ならある意味「小さな政府」って事か…

 

お主もワルよのう…

 

でもコレをあからさまにしたら、税って何なんだ、政府って何なんだって事になりませんか?

 

ちょっと脱線した感じですが、要するに「本来貰える資格はあるが、今まで手続き面倒で貰えてなかった人」が貰いだした事によって困窮したり破綻するシステムならそもそも設計が間違ってると思うのです。

 

 

 

公平感の問題

負の所得税は一部の人々から税金を取り立て、それを別の人々に与えるシステムである。与えられる側は政治的関心が高くなるから、議会で多数派になり、少数派に税金を強いることになりかねない――。

 

筈井利人さんご自身が前回の記事でも書いているように、法人や富裕層への増税も既に「海外に逃げる」等を理由に躊躇われているので、必ずしも与えられる側の方が政治力が強くなるって事も無いと思うのですが…

 

それはともかく確かに、「負の所得税」だと「払う側」と「貰う側」に分かれてしまうので感覚的に不公平感を抱かせるとは思います。

 

何故「負の所得税」とベーシック・インカムが混同、同一視されているのかと言うと、どうやら計算式がほぼ同じであり、分配の結果も同じになる為らしいです。

gw07.net

 

ただ、過程も運用の仕方も異なる。

高所得者は「負の所得税」でもベーシック・インカムでも結果的には同じぐらい損なのでしょうが、ベーシック・インカムでは「負の所得税」と異なり高所得者も公平に「貰う側」にもなるのです。

 

それから、「負の所得税」はその名の通り「所得税」に限定されていますが、ベーシック・インカムは財源を所得税に限っていない。

例えば消費税を財源にすれば低所得者低所得者なりに払う事になる訳です。

 

次回以降にも関連して行く話ですが、個人的には色々な理由から、全部とは言わないまでも財源は消費税を主にした方が良いと思っています。